アナログならではの質感をデジタルに変換して届けるという、新しいUIデザイナーの形を求めて/株式会社グッドパッチ?卒業生 峰村巧光

インタビュー

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イチからものを生み出すという、難しいからこその面白さ

――はじめにグッドパッチさん、そして峰村さんのお仕事内容について教えてください

その中で僕は基本的にクライアントワークのUIデザイナーとして働いています。クライアントである企業の経営層の方などと密に話をしながら、どこに課題があるのか、そして何を作っていくべきなのかを見つけてUIに落とし込み、リリースするまでサポートしていくという感じです。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん お話を伺った峰村さん
お話を伺った峰村巧光さん

――そもそもグッドパッチさんに入社しようと思ったきっかけは?

峰村:僕はグラフィックデザイン学科にいたので、いわゆる紙もののデザインばかりしていたんですけど、ソフトウェアも昔から好きだったんですよね。デジタルものが好きだったというか。でも、グラフィックデザインのアナログな部分、例えば紙の手触りとか重さとか、そういう触覚を通じて得た感覚を生かして作るというのは、デジタルでは表現しきれない部分だったりするのかなと。それなら、自分がそこをデジタルで表現できるデザイナーになりたいと思いました。それができれば新たな価値も生まれますし。さらに同じ学科の先輩が「UIデザインをするならグッドパッチが一番いいよ」と教えてくれて、それがきっかけで選考を受けることにしました。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん お話を伺った峰村さん

――デザインする媒体のメインが紙からデジタルに変わるというところで不安はありませんでしたか?

峰村:そういうのはあまりなかったですね。やったことないことをやりたいタイプなので(笑)。アナログならではの喜びみたいなものを、デジタルに変換して同じように届けられるデザイナーってなかなかいないと思うんです。だからこそ、そこを研究して自分の強みにしていきたいという考えは当初からあったような気がします。

ただUIデザイナーと名乗ってはいるものの、蓋を開けてみるとデザインの対象は全然UIに限らなくて。例えばクライアントさんに解決したい課題とか作りたいと思っているものをヒアリングしていくと、デジタルプロダクトを作らなくても解決できる、って答えに行き着く時があるんですね。もちろん作るものが最初から決まっている場合もありますけど、基本的には状況に応じて必要なものをデザインしていくことになるので、グラフィックデザインを作る機会も普通にありますね。

ちなみに、ここに勤務しているデザイナーはもともとソフトウェアに携わっていた人や電子工学を学んできた人、それから総合大学出身の人が多いので、美大出身というのはわりとレアなんです。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん 同僚の方と談笑する峰村さん
社内には社員同士がラフに交流できるカウンターも
株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん お話を伺った峰村さん

――そうなると、グラフィックデザインを学んできたことが強みとなって発揮される機会も多いのでは?

峰村:それはありますね。以前、ある企業の業務用システムをデザインしたんですけど、あくまでもその企業の社内で使うものなので、そこまでデザインを華やかにする必要はなかったんですね。でも僕はお節介が好きなので(笑)、自分の裁量でロゴを作ってそのシステムの中につけてお披露目したら、クライアントさんがすっごく喜んでくれて。普段仕事で使うものだからこそ愛着を持って使ってもらいたいと思いましたし、そういうところでどんなお節介ができるか考えて、それが受け入れられるという状況はとてもいい経験になりました。自分の得意分野がグラフィックデザインだからこそ作れたものでもあると思うので、そこは僕の強みと言えるかもしれません。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん PCに向かう作業中の峰村さん

――そんな峰村さんがお仕事をする上でいつも大切にされていることは?

峰村:やっぱりシンプルに面白い仕事をしたいですね。イチからものを生み出すってもちろん辛いんですけど、辛いからこそ面白く考えたいし、どうしたら面白いものが作れるかみたいなところは常に考え続けている気がします。ただ、ここでの仕事は基本的にチームで取り組むので、僕一人だけが戦っているわけではなく、みんなで一つのものを作り上げていくというところに心強さを感じています。大学にいた時と同じように、ものづくりとかデザインが好きな人ばかり揃っているので、学んできた畑は違えど、共通するものも多いし仕事もしやすいし、向き合うものが同じという安心感はありますね。

今も生き続ける「迷った時は手を動かせ」の教え

――グラフィックデザイン学科に入ろうと思ったきっかけを教えてください

峰村:美術科のある高校に通っていたので、その頃はずっと絵を描いたりしていたんですけど、あんまり上手ではなかったんですよね。それでアートというところから、誰かのためにものを作っていく商業的なデザインの方にシフトチェンジしました。そしたら当時の美術科の先生が芸工大を勧めてくれて。僕は青森県出身なので同じ東北というのもあって、芸工大のグラフィックデザイン学科を選びました。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん お話をする峰村さん

――当時の学びが今も生かされていると感じることはありますか?

峰村:一番生かされているのは考え方の部分ですね。僕は中山ダイスケ先生のゼミだったんですけど、中山先生はいつも「手に脳みそがついているんだよ」と言っていました。だから、頭で考えるのではなく手を動かして作りながら考えろと。多分、手が動かない時って「これは違うな。じゃあどうすればいいんだろう?」って悩んでしまってる時なんですよね。でもそれって頭で考えてるから「これは違う」と思ってしまってるだけで、自分がダメだと思っているそのデザインを一度手を動かしてアウトプットしてみることで、「あ、これちょっとだけ変えればイケるかも!」とハッとする時が結構あって。やっぱり目に見えるものがあると、それをたたき台にしてチームやクライアントと会話ができるじゃないですか。だからその分、前に進めるんですよね。そういうのって、なかなかできそうでできないことだったりしますけど、僕は大学にいるうちに教えてもらえたのですごく良かったです。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん お話をする峰村さん

――どんな時にこのお仕事のやりがいを感じますか?

峰村:クライアントやユーザーに喜んでもらえた時というのはもちろんなんですが、やっぱりその前に、自分の中で納得できるものが作れるかどうか、みたいなところがずっとあって。なので、それがちょっとでも前に進むというか、作れそうな瞬間、作れた瞬間というのは脳汁が出ている感じがします(笑)。

それから新卒の頃、スマホアプリのような小さいサイズのサービス用アイコンを100個、200個と仕事で作ったんですね。それって1個だけ見たらすごく小さいんですけど、全部に当てはめていくと本当に全体の印象が大きく変わって。そういう細部のクオリティみたいなところを考えながら、同時に「どうやったらお金を生み出せるか」といった抽象的なことも並行して考えていく仕事というのはめちゃくちゃ面白いし、楽しいですね。

――今後、挑戦してみたいことはありますか?

実は…いつかデザインの先生になりたいと思っているんです。芸工大でデザインを教えたくて。そういう考え方を抱くようになったのは、中山先生をはじめ、すごくいい先生方に出会えたから。教わることは非常に多かったですね。当時の僕は世界をちょっと斜めに見ているようなところがあって、あまりいい人間ではなかったというか…。でもそんな僕のことを、こうやってちゃんと仕事できる一人前の人間にしてくれた(笑)。そんなふうに「ものづくりは好きだけどうまく自分を表現できない」という人たちをちゃんと世の中に送り出してあげられる仕事って、本当に素敵だなと思います。そして自分もそういう先生になることが将来の夢になりました。大学の先生ってちょっとヘンな人も多いんですけどね(笑)。でもそれがまたカッコいいです。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん お話をする峰村さん

――それでは最後に高校生、受験生へメッセージをお願いします

峰村:もし当時の自分に何か伝えるとしたら、「やりたいことがなくても、オモロイものを見つけなさい」って言うんじゃないかな。「何が得意?」とか「何がやりたい?」って聞かれてもわからないってことは結構あるけど、「自分が面白いと感じる何か」を探して、見つけて、そしてどうすればそれを勉強していけるのかを考えることはすごく大事だと思います。受験って辛いものではあるけれど、どうせなら面白く戦ってほしいですね。

――峰村さんの中では、常に「面白い」がキーワードなんですね

峰村:そうですね。でももともとはすごく“気にしい”だったんですよ。とにかく落ち込みやすかったし。でも、ものを作ることで誰かと会話できたり自分を肯定できるっていうのを芸工大で学んで、それからは「面白く生きた方が得」って思えるようになりました。芸工大は自分を大きく変えてくれた、今でも本当に好きな大学です。

株式会社グッドパッチ 峰村巧光さん 会社ロゴマーク前にて峰村さん

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芸工大を卒業した現在も、ゼミの担当教員だった中山学長と交流が続いているという峰村さん。さまざまな学びや出会いを通して得ることができた「自分を肯定する力」は、その後「面白く生きる力」となって峰村さんの日々の仕事を支えています。さらに在学中は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017のポスターにデザインが採用されるなど、確かなグラフィックデザイン力も養われていたからこそ、こうして新しいUIデザイナーへの道が拓かれているのだと感じました。

(撮影:永峰拓也、取材:渡辺志織、入試広報課?土屋)


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任你博 広報担当
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